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Vol.3「きっと、ずっと、忘れない」
1998.09.27〜ナリタブライアンへの追悼
ナリタブライアン(CBスタッド)
Carrot Lunch Photo Service
1998年9月27日にナリタブライアンが亡くなって、2週間が経った。
彼の訃報を私は夜のスポーツニュースで知った。 あまりにも突然の訃報にびっくりし、一瞬言葉を失った。
私はリアルタイムで彼の走りを見たことがなかったけど、彼の活躍ぶりを雑誌やVTRなどで見たときには「すごいやー」と驚いた。三冠馬として名を残し、引退後も種牡馬として頑張るはずだったのに……。今年の夏、大きな手術をしたが、その後順調に回復していると聞いていた。兄ビワハヤヒデの産駒が今年デビューし、弟ビワタケヒデ、従妹のファレノプシスが秋のレースに向けて頑張っている姿を見て、きっとブライアンも「頑張って直そう」と思っていたに違いない。
彼のターフでの姿をリアルタイムで見られなかったのが残念だった。もう少し早く競馬に興味を持っていたら、一瞬で大ファンになっていただろう。
ブライアンが私達に与えてくれた夢を、彼が遺していったものを、今度は子供達が継いでくれるだろう。ブライアン産駒がターフを走り始める2001年、競馬界は、そして私達はどうなっているのだろうか……。

彼が亡くなって数日間、ブライアンが遺してくれたものって、何だろうと考えていた。現役時代の彼を殆ど知らない私はすぐには答えられないけれど……。
そんな時、今日(10/13)のスポーツ新聞の一面に、衝撃的な記事が書かれていた。

ナリタブライアン、天皇賞馬タマモクロス、菊花賞馬マチカネフクキタルなどとの名コンビで名を馳せた中央競馬の名ジョッキー、南井克巳騎手が、来春騎手引退、調教師を目指す事を決意したという。
南井騎手は45歳のベテランだが、関西リーディングジョッキーは6位と上位を保ち、重賞勝利も多く、昨年の菊花賞ではマチカネフクキタルで、今年の宝塚記念ではサイレンススズカでG1勝利を飾った。思い切りの良い手綱さばきとハートフルな笑顔と時々思いがけない駄洒落を言う所など、好きな騎手の一人である。6月に東京競馬場に行った時、南井騎手の姿を初めて生で見た時、自然体で馬に乗っている姿に好感を持った。その日行われた目黒記念(G2)では3番人気(?)のゴーイングスズカに騎乗し、雨の中逆転して勝った時、ゴーイングスズカの単勝を買った仲間の一人がゴール手前で「ミナイーー!」と叫んだ時に、彼とゴーイングスズカが前の馬を追い抜いた事を今でも覚えている。
そんな南井騎手が、現役としてまだまだ活躍出来るうちに、馬を育てる側に回りたいという。この記事を読んだ時、私は驚き、少しさびしくなった。彼がこの決意に至った理由はいろいろとあると思うけど、私の中で考えているうちに一つ思い浮かんだのは、ナリタブライアンの死だったのではないだろうか。

彼が一番輝いていた時代(もちろん今も輝いているけど)は、何といってもブライアンの5冠時代だと思う。朝日杯3歳S、皐月賞、ダービー、菊花賞、そして有馬記念を勝った時、ブライアンの背中には彼が乗っていた。ブライアンが死んだという事を知ったとき、彼はかなりショックだったようだった。彼自身は引退していても、彼の子供達には乗って走ってみたいと思っていたのかも知れない。しかし、ブライアンが亡くなり、残された子供たちは昨年と今年に種付けして生まれる(生まれた)仔だけとなった。
南井騎手は、もしかしたらブライアンの子供たちを自らの手で育てたいという思いを持っているのではないだろうか(これはあくまで私の推測だけど)。彼が来年1年間調教師の勉強をした後、再来年に開業する頃には、ブライアンの子供達がデビューしていくだろう。だからこそ、騎手としてまだまだやれるけど、今ここで決意して新たな道を歩もうと思ったのだろう。

南井騎手は14日までにJRAへ調教師試験の願書を出し、1月の試験に備えるというが、1000勝ジョッキーの特典もあって(通算1000勝に達している騎手は1次試験を免除され、2次試験のみとなる)、調教師合格は間違いないだろう。騎手としての活躍が来年2月までというのはさびしいけど、彼が決めた道だから、正式に発表になったら冷静に受け止めようと思う。それに秋はマチカネフクキタル(ジャパンC、有馬記念)やエイシンバーリン(スプリンターS)で「最後の」G1勝利をという期待もある。彼には最後まで自分の競馬を楽しんで欲しいと願うばかりである。

当初はブライアンの事だけを書くつもりだったのだが、この突然のニュースが飛び込んで来たので、ブライアン&南井という名コンビを一緒に書くのがいいのではと思って、今回はこういう形になった。
ブライアンがいなくなっても、南井さんが鞭を置く事になっても、二人の事をきっと、ずっと、忘れない……。

P.S.
その後、南井騎手は正式に調教師を目指す事を発表した。しかし彼は「まだ「引退」とは書かないで欲しい」と記者会見で話していた。それは、最後の最後まで騎手としての自分を全うしたいから。
このコラムで「引退」と書いてしまった事をちょっと後悔してしまった。そう、まだ彼の走りは見ることが出来る。マチカネフクキタルが調整不足で休養に入っているため、南井=フクキタルとのコンビが見られるかはまだ分からないけど、彼はこれからもいろいろな馬に乗って、私達を興奮させるような走りを見せてくれることだろう。私も「引退」という事を頭の隅から取り除いて、彼の精一杯の走りを見ていきたいと思った。

ナリタブライアンのご冥福を心からお祈りしています。
Last Update:1998/10/20
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