99年2月10日、調教師合格の朗報を受けた南井克巳は、正式に引退表明をした。 引退の理由は調教師試験に合格したことが直接の理由と言われている。既に調教師受験に挑戦という時点で事実上の引退となっているが、彼はあえて正式に合格するまで引退表明をしなかった。合格の知らせを受けた南井は、週刊ギャロップに寄せた手記にこう記している。 「嬉しいというより、正直言って今は真っ白な気持ちなんです。 ただ、第2の人生が一から始まるんだなと……。」 最後の重賞レースとなった「ダイヤモンドS(G3)」に、インターフラッグで挑戦したが、残念ながら破れてしまった。しかし、勝った馬が彼のかつてのパートナーであるタマモクロスの子供であるタマモイナズマという所に、偶然とは言えない何かを感じたのは、おそらく私だけではないだろう。願わくば南井が騎乗したインターフラッグとのワンツーフィニッシュを見たかったけど。 そして騎手としての「最後の日」は、彼とゆかりのある中京で迎えた。彼の出身地であり、初めてレースをした場所であり、初めて重賞を勝った所でもある。重賞レースが行われてない、裏開催の場所をあえて最後の地として選んだ所に、彼のある種の「こだわり」を感じた。 その中京での最後のレースで彼は、見事な走りで1着でゴールした。TVの実況では「南井克巳」を完全にクローズアップしていた。スタートからゴールまで、ずっとである。その時彼の着ていた勝負服は白を基調にしていたが、まるで最後のレースの為に取っておいた様な白だった。実際は分からないけれど、私はそう思いたい。 レースを終えた後、花束を受け取った彼が涙をためていたのをTVで見て、私もジーンときてしまった。でも、最後の最後まで騎手としてまっとうした満足感も感じられた。これでよかったんだろうな。華があるうちに引退することが出来て、また新しい夢を与える事が出来て良かった、そう思えるようになった。 この日、自分の掲示板にこんなメッセージを書いた。
最後の最後まで騎手としての誇りと保ったまま、鞭をおいた南井克巳。 彼から受けたたくさんの思い出と夢に感謝したいです。 これからは調教師として、また沢山の夢と思い出を私達に与えて欲しいですね。 We will meet again Don't know where Don't know when But I know we'll meet again some sunny day Keep smiling true just like you always do Till the blue skies makes the dark clouds fade away Some sunny day We'll meet again (THE BYRDS/We'll Meet Again)
また近いうちに彼に会えることを願って……。
(99/04/18)